兄弟は他人の始まり№3お兄さんがこんな人だったなんて信じられない

goninnkyoudai 相続
souzokusimai

お兄さん、どうしちゃったんだろう

mumuobasann

呆れてものが言えないわ

石川さん(仮名)姉妹は深いタメ息をつきました。

母の葬儀の翌週、弁護士から届いた通知書

5人兄弟の長女である石川さんの家に、次男、次女、三男が集まっていました。

兄弟は先週、母の葬儀を済ませたばかり。

そんなときに長男の依頼を受けた弁護士から届いた通知書。

その内容に4人は大きなショックを受けたのです。

次男に全部相続させると決めていたはず

母親は生存中に子供たちにいろいろやってくれました。

長女、次女、三男は母親が生存中に土地をもらいその土地に家を建てていました。

だから、母の遺産は最後まで面倒をみてくれた次男に全部相続させるつもりでいたし、

これから相続放棄の手続きをしようとしていたところでした。

 

兄弟全員がそれで納得していたはずでした。

家族仲が良いことが自慢でした

長男と次男が土地を貰っていないのは次の理由からです。

①長男は結婚直後は実家で両親と同居していたが、わずか1年半で出て行ってしまった。

②やがて次男が結婚。実家で両親と同居を始めた。

次男夫婦が実家に入ったことで、家族親戚一同の間では『家は次男が継ぐ』という暗黙の了解があったからです。

次男夫婦は両親がが亡くなるまで献身的に世話をしてくれました。

kaigo

父親のときは母と弟夫婦に任せっきりだった介護も、母親のときは

長女である石川さんと次女は次男夫婦の負担を減らそうと

頻繁に実家を訪れて母親の世話をしました。

本当にお互いを思いやることのできる仲の良い兄弟でした。

石川さんはそれを誇らしげに思っていました。

 

兄弟たちの根底には『親は本来長男がみるもの』

という古い考えがありましたが、

家族がバラバラになるのを避けるために、

誰も長男を責めたり意見することは一切しませんでした。

 

それどころか、長女である石川さんは

気まずい雰囲気で親を避けがちだった長男を

家族の輪に入れようと気を遣い、

度々食事会などを開いて長男夫婦を誘い、

長男夫婦が参加しやすいような雰囲気作りに努めてきました。

 

そのおかげで母もわだかまりを持つことなく、

家族全員が仲良くやってきたのです。

母親が亡くなったとたん

ところが、母が亡くなったとたん、

兄本人からではなく、弁護士を通じて

相続放棄はしないので速やかに分割協議を進めたいと言ってきたのです。

他の妹弟たちは相続放棄をすると言っているので自分と次男で等分に、

金銭はもちろん、実家の土地は分筆して相続すると通告してきたのです。

 

次男一家が済んでいる母屋は敷地の左半分の所に建っており、

敷地の右半分は広い庭になっているので分筆しやすい状態にはなっています。

しかも兄が要求している右半分の土地は最も資産価値の高い東南角地。

兄はそれを要求してきたのです。

 

兄がこれほど急いでいるのには理由があります。

もし相続する土地を分筆するなら、

遺産分割協議の前に決めないと

余計な交換登記の申請が必要になるなどして面倒くさいことになるのです。

遺産分割前に分筆するなら、母名義のまま分筆登記を申請し、

二つの土地が出来上がってから遺産分割を行い、

長男と次男がそれぞれ土地を取得する相続登記をすれば済むのです。

 

それらをすべて見越して

母の生きているときから弁護士と相談していたとしか思えない段取りの良さ。

4人の妹弟は頭を抱えていました。

 

teiannobasann

お兄さんがそんな人だったなんて…

どうすれば良かったの?

それは

母親にすべてを次男に相続させる旨の遺言書を書いてもらえば良かったのです。

 

次男に全部相続させる旨の遺言書があっても

他の4人の子供にはそれぞれ10分の1の遺留分があります。

 

長女、次女、三男は遺留分侵害額請求権を行使せず、

長男だけが行使したとしても長男の遺留分も10分の1ですから

今回のように2分の1を持っていかれることはなかったのです。

 

そして、最初から遺言があれば

長男が今回のような弟妹たちを敵にまわすような行動を取ることもなかったでしょう。

うちに限って!

兄弟は円満に相続できると信じて疑わなかったのですから

仕方のないことかもしれません。

 

慌てて兄に電話をすると、

携帯も固定電話も電話番号が変えられていました。

 

弁護士からの通知書には

『今後一切長男への連絡は弁護士を通すように』

と書かれてありました。

 

souzokusimai

こんなふうに兄弟の縁を切るようなことまでして

弟の隣の土地をもらってどうしようというんだろう…

高い塀でも作って、一生顔を合わさないようにして暮らすかしら?

 

弟妹たちには長男の気持がさっぱり理解できません。

 

しかし冷静に考えると、

長男夫婦が実家を出なければ、母親の遺産のほとんどは長男のものになっていたでしょう。

母親や弟妹たちは長男が実家を出て行った時点で遺産はいらないのだろうと勝手に判断し、

長男にしてみれば、確かに自分は実家を出たが、弟妹たちがみんな土地を貰っているのに

自分は何も貰っていないと不満に思っていた。

そこに気持ちのズレが生じていたのです。

 

長男は昔実家を出た時、親弟妹にはどう思われていい

と覚悟したのですから

そのときに出来た溝を埋めることができなかった

ということかもしれませんね。